細かい部分にリアリティがない、ということは、渡邉睦月の脚本における最大の問題点なのだが、それがついに臨界点を超えたというべきか、あまりにも「あり得ない」展開の連続で、物語の本筋であるところの竹野内豊とチェジウの悲恋、そして橋爪功・杉浦直樹の情念、という部分の出来不出来を問える状況ではなかった。「橋爪功に気づかれないために竹野内豊を一人で潜入させる」と言いながら、ビルの周囲をヘリコプターまで飛んでるという絶望的な滑稽さに始まって、警察がビル周辺を取り囲んでいるにもかかわらずヨボヨボ老人の杉浦直樹があっさりビルに入れていたり、さらには指名手配中の速水もこみちまでいたりというお粗末さ。チェジウに到っては、重要事件の犯人として韓国へ移送中にも関わらずドラクエかというレベルで各所を引っ張りまわされ、あげく撃たれた竹野内豊と1対1でご対面。ここまで来ると何をかいわんやという世界である。
演出・平野俊一の最後のご奉公で、画面の緊迫感は十分だったのだが、いかんせん肝心の物語がアレでは・・・。前クールの「恋の時間」及び次クールの「おいしいプロポーズ」のローテーションの谷間ぶりを見るにつけ、このドラマにTBSがかけていた気合いとカネの量は想像に余るものがあるが、それを成功させるにはせめて、最低限のリアリティのある脚本を書ける人間を用意すべきであった。その思いを強くせざるを得ない、いささか淋しいラストだった。
もちろん、なんで昼日中に歩き回ってる竹野内豊が捕まんねーんだとか、橋爪功が罠と見抜く見抜かない以前に、どうやって誰もいない味スタに入るんだよとか、言いたいことは山ほどあるわけだが、もはやこのドラマにそこを突っ込んでも仕方ないか・・・と思ってしまう部分もあるわけで、昔の「ガチンコ!」ではないが(あの番組も「やらせ」かどうかを突っ込んでも意味が無かった)、そう思わせた作り手側の勝ち、とも言えなくは無い。・・・もちろんドラマとしての評価は当然ダダ落ちだが。
ともかくも、あとはこれだけ不必要に大きくなってしまった話にどうエンドマークを付けるのか。見るべき点はそこくらいだろう。
今回の物語のポイントは、なんと言っても水川あさみだろう。かわいかったねー!!(そこかよ)・・・この人は、鋭い顔立ちをしているがゆえに「とがった」役どころが多く、今回のようにストレートに「かわいい」演技をするケースは少なかったのだが、「恋する水川あさみ」というのもなかなか良いものだ、と改めて実感。・・・まあそれはともかくとしても、物語としても、香取慎吾と水川あさみの関係性は、これまでの積み上げが十二分にあるだけに展開として違和感はなく、最後に「悲劇の花嫁」になる、という王道中の王道の展開まで、物語としてはバッチリ。高木健太郎の演出が香取慎吾を「泳がせすぎ」(=演出としての工夫が足りない)で、ハイテンションがかなり上滑っているのには苦笑させられたが、水川あさみが「死んだ」後、香取慎吾の「淋しいに決まってるだろ!」というセリフには、素直にホロっとさせられるものがあった。
ただ、やはり全体としては「甘口」すぎる部分があり、いくら「子供向け」とはいえ、いったん「死んだ」水川あさみが甦ってめでたしめでたし・・・というのは、はっきり言って「ずるい」展開だし、そもそも「妖怪と人間の敵対関係」という、大地真央の役どころが持っているはずの本質の部分には一切触れないままだったのも、前回の松重豊の存在感を台無しにしてしまうという意味で、物語としては完成度を減じてしまっている。このままで、どうやってラストの「天竺」で落とし前をつけるのか、まあここは坂元裕二のお手並み拝見、というところだろうか。
・・・とりあえず、「瑛太が真犯人でした」という「真相」には、二つの問題があった。一つは、瑛太木村多江に撃たれてるじゃねーかということで、いくら劇中で瑛太自らが「僕時々へまするから」とエクスキューズしていたとはいえ、死んじゃシャレにならんだろという話もあるし、そもそも「黒幕」だった瑛太が、共犯者の濱田マリに裏切られてショックを受けている(=何をするか分からない)木村多江のところに行く、という展開にはムリがある。これは、言い繕えない佐藤嗣麻子脚本の凡ミスだ。
もう一つは、正体がバレた時の瑛太の演技で、復讐をしながらも、一方でどうしようもなく篠原涼子に惹かれている・・・という部分の演技はナチュラルで良かったのだが、「真犯人」として真相を吐露する部分は明らかに迫力不足。わざと感情を切り落とした演技をしようとしていたのかもしれないが、演技が平板で、ヘタしたら棒読みとすら取られかねないものがあった。
・・・とまあ、最後の最後まで来てオチがスベったと言わざるを得ない展開だったわけだが、それでも3つの事件を破綻なくまとめ上げてきたこれまでの展開には敬意を表すべきものがあったし、「復讐者」である瑛太が、一方で関わりあい過ぎた篠原涼子に対して、恋心を抱いていた・・・という展開の切なさは、前述の問題点を加味しても印象に残るものがあった。最後の最後、篠原涼子が驚愕に目を見開いて・・・という中途半端な後味の悪さは全くもって不必要な、悪趣味なものだったが、それでも、「連続ドラマ」のミステリー作品として見た場合には、なかなか評価できるドラマだったのではないだろうか。
話の内容としては、山田孝之が西田尚美に、綾瀬はるかが八千草薫によって「人間味」に触れようとした瞬間に、再び「過去」が邪魔をする・・・という切ない展開。特に、西田尚美の役どころは、おそらくは今回までの短い出演だろうが、薄幸キャラ似合いすぎな西田尚美の存在感もあり、印象に残るものだった。
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