それは例えば、藤原紀香が最後に見せた谷原章介への執着だったり(これこそ、「大奥」シリーズの醍醐味である「女の情念」そのもの。藤原紀香は良く頑張っていた)、あるいはその谷原章介が、最後に自分の体を張ってまで、内山理名との子供を殺した北村一輝を陥れ、内山理名への「愛」を貫くと同時に、争いを好まない「平凡」な自分を貫く姿だったりするわけだが(こちらは、谷原章介の演技力は今さら言うまでも無いだろう)、最後の最後でこうした強い想いが交錯する展開というのは、連続ドラマのラストとしては見事な盛り上げと言える。浅野妙子の脚本は、この点に関してはツボを心得た出来だった。また、林徹の演出も、映像の美しさはもちろんだが、谷原章介・田辺誠一いずれもいまわの際の瞬間に見たものが「花」である、という演出に味があり、それを谷原章介の人生観と絡めていたのは見事な出来だった。
繰り返しになるが、やはりこのドラマ、最後まで主人公が物語の「傍観者」だった感が否めない。ドラマ全体としての盛り上がりはそれによって減じられているが、終盤に向かうにつれて様々な人物が見せた「常念」は、それはそれで見応えのあるものだったと評価できるだろう。
話の展開については・・・ほぼ毎回同じことを述べて恐縮なのだが、やはり内山理名の「立ち位置」が変わりすぎているというか、例えば今回で言えば,江波杏子や貫地谷しほりが見せた「情念」と比べて、この人にとってのそれが何なのかということがとても分かりづらい。今回、田辺誠一や江波杏子に谷原章介を託されたからといって、急に谷原章介のために行動してみたりとか。そもそも田辺誠一が急に「谷原章介に仕えろ」というのも唐突過ぎて分かりづらかったが、それにしても、もうちょっと主人公に魅力がないと、ねえ。
そして、それはもちろん、これまで私が述べてきたこのドラマの長所においても同様で、沢尻エリカの「生」を描ききること、そしてそれを通じて生きることの素晴らしさ、貴さを伝えるという、文面にすると若干こっ恥ずかしいこのドラマのテーマは、最後まで、それこそ沢尻エリカの命の灯が尽きる瞬間まで(あるいは、尽きた後も)、しっかりと貫かれていた。それは、たとえ自分の力で歩けなくなっても、その「言葉」で人の役に立てる・・・という部分だったり、あるいは死後もなお献体として役に立ちたいという「意志」だったりという部分に端的に現れていたし、またそうした沢尻エリカの意志に影響されて、勝野洋が錦戸亮の成長を認めたり、そしてそのことが再び沢尻エリカと錦戸亮の関係を甦らせたり・・・と、ドラマの中で(脇役も含めて)繋がっているのが、ドラマとして良く出来ている。このドラマ、脚本は最終的に大島里美がラストを引き受けたようだが、物語としての軸が最後までブレなかったことは、高く評価したいところだ。
岡田恵和脚本にありがちなことだが、このドラマも例に漏れず、最終回に作為的に感動を持ってくる(例えば、玉置浩二のいまわの際を描くとか)ことをせず、ただひたすらに、これまで紡ぎあげてきた物語にエンドマークをつける、あるいは一つの区切りをつけるということに専念していたため、最終回の今回に特別大きな感動を得られたというわけではないが(というか、それはこれまで十分すぎるほどもらっているしね)、一方で通例と違い、このドラマでは描きたいことに最後までブレが無かったため、菅野美穂が自らの生に感謝する心境にまでなっていたこと、そしてそれが愛する人(玉置浩二)を見つけたからだということ・・・まさに、タイトルどおり「あいのうた」に相応しいラストを、穏やかな気持ちで受け取ることができた。先週までのボロ泣き・号泣とはちょっと違うかもしれないが、穏やかな幸福に包まれるという意味で、良い結末だったと思う。
惜しむらくは、大谷太郎の演出が、ややセンチメンタルに過ぎた嫌いのあることか。もちろん、ドラマ全体を振り返ってみれば、このドラマにおける演出(大谷太郎・猪股隆一)の貢献は計り知れないものがあるが、もう少し全体を抑制的にして、最後の最後だけ盛り上げるような形にすれば、もっと良かったのかもしれない。
・・・いずれにせよ、久々に「来週が楽しみ!」と思えるほど、あるいは鼻水出るほど泣けるドラマだったことは間違いない。良いモン見させてもらいました。ありがとう。
まあ正直言って今回のサブタイトル「ラブレター」を見た時点で、その手紙で錦戸亮に別れを告げる展開になるのは予想がついていたので、見ているこちらとしては「悲しみの感動」というよりは、ただただ「辛い」というのが先に立ってしまい、エンタテインメントとしてはどうかという部分はあるが、病状がここまで進行した設定の中でも、沢尻エリカのひたむきな演技からは感じさせられるものがある。あとは最後まで、どう「生ききる」姿を描くのか。このドラマ、結末は初めから決まっているわけだから、そこに到る過程、特に、最後の段階に来てただ「良く頑張った」だけでない、沢尻エリカが生き抜いた証としての「何か」に期待したいところだ。
というのも、前回まででこのドラマオリジナルな要素はほぼ描きつくされていたので(まあモロ着地に失敗してたけど)、今回は亀梨和也と山下智久・堀北真希の別れが描かれていただけで、しかもそこに何か新しい意匠があるわけでは全く無かったので、これといって印象に残るものが無かったのだ。厳しい言い方だが、3人以外のクラスメイトとの別れのシーンなんか、「1人の転校のためにクラスメイト全員が集まる」という状況設定自体に全くリアリティがなく(=これまでのこのドラマの長所の1つであった「今」の高校生の心象風景の描写になっていない、ということ)、突き抜けるような空の青さもあってまるで3年B組金八先生かという感じだった。
このドラマ、正直言って最終的に何を描きたかったのかが良く分からない。おそらくそのことを証明する上で一番良い方法は、第1回を見返してみることだろう。ドラマ全体の「空気感」の違いと、ついでに山下智久のキャラ別人ぶりにも驚かされるはずだ。
また、そもそも、柊留美が自らの「正体」を明かすタイミングや、あるいはその後の彼らとの関わりも含めて、展開が速すぎる。あれだけの「暗闇」を見せておいて、こんなにあっさり幕引きとは・・・。こちらも、やはり肩透かし感が否めない。あまりにもったいないのではないだろうか。
話としては、もはや完全に内山理名は情念の「戦い」からはかやの外で、周囲の智謀に長けた人物達の思惑に乗って、その時その時の「意志」(ここだけは唯一このシリーズの主人公らしさが辛うじて残っているところ)で行動しているに過ぎない。あとは、周囲の面々がどう盛り上げていくか・・・というところだが、今回は江波杏子が魅せてくれた。ていうか「情念」入りすぎてて怖いよ。 (もちろん誉めてます)
・・・というわけなので、こうまで感動していると「何に感動したのか」を客観的に説明するのがたいへん難しいのだが(苦笑)、やはり一番胸を打ったのは「言葉」かな。以前にも述べたが、このドラマのセリフは、セリフとしての完成度というよりも、自然な「話し言葉」を多く使っていて、それがよりストレートに登場人物の心情を伝えていると私は感じているが、今回、玉置浩二が子供達に自らの運命を伝えた時の「言葉」は、まさにその集大成というべきものだった。「お父さんお前達大好きだ。大好きだ。大好きだ。」と3回繰り返した言葉や、「お前達がほんとに困ったときは、絶対助けにいってやる」という言葉には、和久井映見のセリフではないが、理屈ではない「想い」が全て込められていて、それが見ているこちらに素直に伝わってくるため、こちらも自然と涙があふれ出てくる。感覚的なレビューで恐縮だが、まさにそんな感じだった。
ただ、我ながらイヤな性格で恐縮だが、一つだけ気になったことが。それは子供達の描写についてで、あまりに「良い子」すぎやしないだろうか。それは玉置浩二の「告白」を受けてからのリアクションについてではなく(まあ、長男のホームランという「奇跡」は、作為的な分あまり感動しなかったというのはあるけど)、普段の場面の話で、いったん野球を投げ出そうとした長男が、玉置浩二に説教されてあっさりやる気を取り戻していたが、これは描写としてちょっと安易だ。確かにこれが話の本題ではない分、そこの描写に時間を割けないというのはあるだろうが、すぐには聞き分けられなくても、玉置浩二の普段の言動を見ていてやる気を取り戻していく・・・そんな丁寧な描写が欲しかった。ここまで素晴らしいとしか言いようの無い手腕を見せている岡田恵和だからこそ、このレベルを期待したい。
ただ、ちょっと厳しいことを言えば、勝野洋の「言葉」が直後の「事件」と直結していたり、あるいは藤木直人の「気持ちがある人には伝わる」という言葉が直後の錦戸亮の「告白」と直結していたりと、物語の展開があまりに即物的というか、連関が分かりやすすぎるのは、展開としてやや作為的な印象を受ける。村上正典のBGMかなり多めかつヴォリューム大演出も含めて、この点が最後の「告白」の感動を減じていたのは否めない。ちょっと惜しいね。
そしてもう一つ、これが本来今回の話の主軸だった「信じればそれが真実になる」ということ。私は亀梨和也の「堕ちて行く」様が類型的だと述べたが、一方で、彼らの年代がいったん何かのきっかけで信頼を失ってしまったら、あとは何を言ってもムダ・・・という不安定な状況に常にある、というのも理解はできる。だからこそ、そんな中で堀北真希が自分を信じてくれた、というのは感動的だし、ましてそれが亀梨和也と堀北真希が抱き合っている写真を見た山下智久が、まさに信じることを「選び取った」行動であるならばなおさらだ。こちらも、柊留美の行動と話が上手くリンクしており、納得の出来だった。
目の前で優勝されるというのがこんなに悔しいことなのか・・・。私は普通、他チームの優勝を見ていても「良かったね」というくらいの感想は抱けるのだが、今回に関しては、目の前で喜びを爆発させるガンバの選手・スタッフ・サポーターを見ていて、申し訳ないが全く祝福する気にはなれなかった。それは決してガンバが優勝に相応しいチームでないからとか、汚いサッカーをやっていたとかいうことではなく(まあ今年の優勝争いは凄まじくレベルが低かったとは思うが)、ただ単に自分達の庭で他人にパーティーをやられている気分というか、彼らは創設以来の初タイトルをリーグ優勝で飾り、あんなにも喜びを爆発させているのに、自分達は負けたことで賞金圏内陥落、という明暗のコントラストに我慢ならなかったからである。
特に感心させられたのは、沢尻エリカがいなくなった隙を狙って始まったホームルームでの描写で、それが良い悪いではなく、様々な立場の人間の本音がバランス良く描かれており(普段沢尻エリカと仲の良い2人のコントラストも絶妙だった)、極めてリアルなものとなっていて、それが沢尻エリカを追い詰めたり、錦戸亮を自分の無力さに苛立たせたりする、というのに強い説得力を与えていた。今回の脚本は全体のストーリー構成を担当している大島里美だったが、良い仕事をしていた。また、今回の木下高男の演出は、主題歌・挿入歌を多用しながら(前述のホームルーム後の沢尻エリカと錦戸亮のシーンでの「粉雪」は、ベタとはいえ良い演出だった)、要所でBGMを止めることで緊張感を盛り上げる大変優れた出来であり、ドラマの世界に引き込まれるものがあった。
ただ、最後の沢尻エリカの「演説」と、それに応えてのクラスメイトの「合唱」は、「話として良くまとまっている」という印象は受けたものの、展開そのものが読めてしまうことと、あとは個人的な考え方になってしまうが、一人一人の「思い」が、一つの歌に収斂されるわけがないと感じてしまうこともあって、感動という意味では今ひとつだったが。・・・とはいえ、全体としては、やはり優れてまとまった出来だったと評価できる。
ああいうセリフや語尾の詳細まで脚本の岡田恵和が決めているとは思えないが、それは演出の仕方であったり、菅野美穂や玉置浩二の演技力がああいう風にドラマをさせているのだろう。ドラマの作りとしては極めて質の高いものだ。
ドラマの本筋としては、今回の展開だけを取り出してみても、やはり内山理名の「意志」あるいは「情念」の弱さが、このドラマの主人公としては魅力に欠ける。今回だけでも、谷原章介に生類憐みの令撤廃を意見してみたり、あるいは高岡早紀にそそのかされて暗殺を託され、迷ってみたりと、「立ち位置」が揺らぎすぎていて、「女の対決」あるいは男との対決にしても、何が物語の「軸」になっているのか、分かりづらくなっている感が強い。
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